
◆花魁(おいらん)
吉原遊廓の遊女で位の高い者のことをいう。現代の高級娼婦、高級愛人などにあたる。吉原に遊廓ができた当初には、少数ではあるが江戸にも太夫がおり、その数は万治元年(1658年)の『吉原細見』によれば、太夫3人であった。18世紀中頃、吉原の禿(かむろ)や新造などの妹分が姉女郎を「おいらん」と呼んだことから転じて上位の吉原遊女を指す言葉となった。「おいらん」の語源については諸説あり、妹分たちが「おいらの所の姉さん」と呼んだことから来ているとする説 、古語「おいらかなり」を語源とする説 等がある。また、落語では「狐や狸は、尾を使い化けたり人をだましたりするが、おいらんは尾がなくてもだませる。→尾(は)いらない→おいらんになったとする珍説が枕などで使われることがあるが、根拠のない俗説に過ぎない。これらはどれも通説であり現在典拠に基づいた確実と言える説は存在しない。現存する錦絵や歌舞伎芝居や落語、講談、映画やテレビドラマなどの、フィクション世界での遊女の姿は文化・文政期(19世紀初め)の風俗を参考としており、対していわゆる廓の掟と称されるものは宝暦(18世紀半ば)以前の作法に由来するものが多く、虚像と実像には時代的に大きな開きがある。